筋骨格系の痛み
筋骨格系の痛みに対する科学的な考え方
ほとんどの頚痛、腰痛、肩痛、膝痛や手足のしびれ(知覚麻痺のことではありませんよ)は生理的トラブルのためです。構造の異常のためではありません。また生理的トラブルが構造の異常でおきているという証拠もありません。
痛みはレントゲンやMRIで表すことのできない生理的なトラブルです。ところがレントゲンやMRIを使ってそれを説明しようとします。ここに大きな問題がひそんでいると考えます。
伝統的医学は構造上の異常が痛みの原因とみなして説明します。多くの医師や患者さんはそれを今だにかたくなに信じています。だから治せない、治らないのです。医師にとっての悲劇は間違った勉強をさせられてきたということです。権威ある立場の医師はいまさら方向転換をしにくいものです。この事実は患者さんにとっても大いなる悲劇です。
生理学で「構造上の異常が痛みをつくる」という根拠(evidence)がありませんから、問い詰めていくと説明がつかなくなっていきます。患者さんには自分にとって不都合なデーターは無視して、都合のよいデーターだけを用いて説明する傾向があります。悪意があるわけではありませんが伝統的な医学を信じて思いこんでいるのです。
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- 医師はレントゲンやMRIを前にして痛みの説明をすることが多いので、どうしても生理的トラブルを構造的問題にすりかえて説明するようになり矛盾が生じてきます。
- 画像所見に特に異常がなかったら「異常ありません。」とか「心配いりません。」とか「原因不明です。」ということになり、どうして痛いのか、なぜ痛みが起きたのかという説明がされることはあまりないと思います。少しひねって「斜角筋症候群」「梨状筋症候群」など、画像では表れない想像上の病態を説明します。画像でヘルニア、分離症(学童期の新鮮疲労骨折は除く)、すべり症がたまたま見つかればそれが痛みの原因だとの思い込みを説明することになります。
- 画像診断は悪性腫瘍、骨折、感染症などを除外するためです。除外診断は大切ですがそれ以上ではありません。
- 医師は除外診断だけをしていればいいのでしょうか。痛み(生理的トラブル)を診断するとき、どのような時に痛みが生じるか(積極的診断)、治療によってどういう変化が起きるか(治療的診断)を観察して総合的に判断しなくてはいけません。
- 生理的トラブルを説明するのは簡単ではありませんが、図を使ったり、治療の効果を確認したりすれば理解していただけます。
なぜ生理的トラブルがおきるのか、どうしたらはやく治めることができるのか、なぜ長引くことがあるのかを考えてみましょう。
生理的トラブルで痛みがおきているのですからそれを調整してやれば治ります。調整のしかたはこれでないとならないというものではありませんが、危険を伴ったり大金を投じたりする必要はないでしょう。
椎間板ヘルニアよるといわれている「いわゆる坐骨神経痛」をはじめほとんどの筋骨格系の痛みは実は侵害受容性疼痛です。侵害受容性疼痛とは発痛物質(主にブラジキニン)が痛覚神経のC繊維の末端についているポリモーダル侵害受容器を刺激して起きる痛みのことです。
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ではどうして発痛物質が産生されるのでしょうか。生理学では、交感神経の緊張による酸欠状態になると産生されるとされています。そのほか、過度の筋収縮が繰り返されることにより細胞膜が破壊され、化学物質の生成、遊離により侵害受容器が興奮し疼痛が誘発されることもあります(ハードな運動による筋の微小損傷)。いずれも構造との関係は証明されていません。
ではなぜ「その部位」を選んで発痛物質が遊離されるのかはいまの医学ではうまく説明できません。なぜその部位に円形脱毛症が生じたのか、なぜその部位に潰瘍が生じたのか、なぜその部位に蕁麻疹が生じたのかをうまく説明できないように。
生じた痛みがなぜ慢性化するのか、沈静化するにはどうしたらいいのか。当サイトをみて勉強してください。脳における痛みの記憶、習慣化が関係しています。
手術という儀式、整体などの手技療法という儀式、腰牽引という儀式、筋力を鍛えるという儀式、などのいろいろな儀式があり、それぞれの儀式で沈静化する人、しない人、さまざまです。この事実は痛み問題の複雑さを示しています。いろいろなタイプのヘルニアがあるのではありません。あなたはどの儀式を選びますか?そのためには科学的な真実を知ることが大切です。
侵害受容性疼痛のほかに神経因性疼痛があります。これは1994年、世界疼痛学会の慢性疼痛分類により「神経系が何らかの損傷あるいは機能的異常を受けたことによって生じる痛みをいい、糖尿病性ニューロパチー、神経叢引き抜き損傷、開胸術後遷延痛、幻視痛、帯状疱疹後神経痛、CRPStype1,type2,などを広く含む慢性疼痛の総称である。」とされています。あの有名なヘルニアによる神経圧迫は書かれていません!!。
「ヘルニアが神経を圧迫しているから痛い」「軟骨が減っているから痛い」などと説明を受けることが多いと思われますが、これらは科学的根拠に基づいているのでしょうか。科学的批判に耐えられることなのでしょうか。
神経が圧迫されて炎症がおきているから痛いのだという説明もよく聞かれます。
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有料サイトの[m3.com]のメディカルサイト検索β版で「神経根炎」を検索しましたら全くちがう疾患であり稀な疾患であるギランバレー症候群に関してのものがありますが、この有名なヘルニアに関するものはありませんでした。「神経根性疼痛」に関しては該当するページがないということです。
「ヘルニアや坐骨神経痛」といわれてで苦しんでいる人がおおぜいいるのに検索でヒットしないのはどういうことなのでしょうか。このような医学辞書はかなり信用できるものと思います。インターネットが発達すると医師もうかうかできませんね!
腰痛・坐骨神経痛など筋骨格系の痛みに対して、なぜ現代医学がもうひとつなのだと思いますか?その一因はおそらく、痛みの原因が構造の異常にあるのだと思いこんでいるからではないでしょうか。
「ヘルニアがあるから痛い」「仙腸関節のゆるみがあるから痛い」「頚や腰骨に歪みがあるから痛い」「仙骨角が変位しているから痛い」などなど、簡単に反論可能な説がまことしやかに飛び交っています。これでは痛みを持つ人は何を信じてよいのやら困ってしまいますよね。悪性腫瘍、骨折など、感染症を除いて、痛みを構造で説明することは不可能です。
痛みは、便秘下痢、喉が渇く、動悸がするといったのと同じように生理的なトラブルなのです。筋骨格系の痛みを一種のストレス反応、あるいは条件反射ととらえるとよいと思います。
ストレス反応として筋骨格系に痛みをつくるタイプ(腰痛、肩こり、いわゆる坐骨神経痛、しびれ、緊張型頭痛)、消化器系にでるタイプ(胃痛、便秘、下痢)、呼吸器系にでるタイプ(咳、鼻炎)、循環器系にでるタイプ(高血圧、不整脈、動悸)、皮膚にでるタイプ(蕁麻疹、掻痒、アトピー)とストレスに対する反応のしかたは人それぞれです。そしてその反応のしかたはくせになってしまいます。花粉症の人が造花をみただけでも症状がでることがあります。
腰痛もこれと似ています。はっきりとした原因がないことが多いものです。痛みの早期遮断はとても大切なことです 。神経線維そのものの損傷による痛み「神経因性疼痛」は特殊なもので、そんなにみられるものではありません。
神経根ブロックや硬膜外ブロックをしたが痛みが取れないという話もよく耳にします。その理由は、そこが痛み刺激の通り道であるかもしれませんが、痛みの責任現場ではないからです。敵のいないところにミサイルを撃ち込んでいるのです。デルマトーム(知覚神経の支配を表した図)と一致した痛みなんて帯状疱疹後の神経痛以外には見たことありません。「痛みの生理学」「痛みの心理学」など、基本的な痛みのメカニズムをもう一度みなおしてみませんか。痛みの研究をしている基礎医学の先生のご活躍を望むものです。
(加茂)
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