2012年6月4日月曜日


マーチン・M・アントニー,カレン・ロワ著/貝谷久宣,久保木富房,丹野義彦監修/鈴木伸一監訳:社交不安障害

マーチン・M・アントニー,カレン・ロワ著/貝谷久宣,久保木富房,丹野義彦監修/鈴木伸一監訳

B5判 120頁 定価2,520円(税込) 2011年6月刊


ISBN978-4-7724-1308-4

2012年6月3日日曜日


〈過ぎたるは及ばざるが如し〉

昨年の原発事故の後、放射能の影響を少なくするには、ヨウ素を摂るといいのではないかと言うことで、ヨウ素をたくさん含んでいる海藻を毎日食べると言う人がいました。
しかし、「閉経後の女性が海藻を食べ過ぎると甲状腺癌のリスクが増す」、と言うニュースがありましたし、閉経後の女性でなくとも、もともと甲状腺に疾患を持っている人が、海藻を摂りすぎると、甲状腺機能に異常が起こることがあったりします。
ヨウ素は人間の体にとって必要なものですが、摂りすりはかえって体に悪影響をもたらすことがあります。日本は海に囲まれており、普通の食生活でも海産物からqヨウ素は充分に摂取していますし、もともとが海底であったため、大陸の内部や高知に比べると土壌に� �ヨウ素が多く含まれており、野菜などからもヨウ素が摂取できますので、あまり意識して海藻を食べなくても充分なわけです。
ビタミンAやCも体に必要なものですが、摂りすぎるとかえって悪影響が出ることがあります。これらは普通の食生活で体に悪影響が出るほど摂りすぎることはまずありません、どちらかと言えば足りないことを心配することが多いでしょう。
しかし、ビタミン不足を気にして、ビタミン剤やサプリメントで不足分を補おうとすると、過剰摂取してしまうことがあります。
何事も、「過ぎたるは及ばざるが如し」、と言うことになるでしょうか。ビタミンやミネラルはバランスのよい食事から摂り、ビタミン剤やサプリメントは補助的なものにしておくのがよいようです。

2012年6月1日金曜日


日本学術会議獣医学研究連絡委員会シンポジウム

他分野から見た獣医学教育のあり方

(以下は、平成12年4月6日につくば国際会議場において開催されたシンポジウムのうち、3題の講演の記録である。この他に、京都大学の加藤尚武氏による「人と動物の関係-倫理学の立場から-」および、関東第一サービスの小野寺威氏による「これからの獣医学教育に望まれるもの-製薬企業の立場から-」を加えて、5題の講演が行われた。)


公衆衛生分野における獣医学教育の課題

高原亮治(防衛庁参事官)、宮川昭二(厚生省)

現代社会において、人々が「動物」との接する機会はますます多様化している。その形態は、単に動物に直接接触することのみならず、間接に動物を利用しその恩恵を社会が受けていることでもあり、また、そのなかでも、例えば、前者では、従来であれば家畜飼養であり今日ではペットなどを中心とした愛玩動物、また将来的には介護犬などであり、後者では食肉、牛乳、卵など動物性食品の利用のほか、実験動物などである。このような機会は私たちに多くの利益や喜びを与えるものであるが、−方では、何らかの原因により、これらの新たな関係からは、時として弊害やそれに伴う社会的不安も生まれ出ている。

例えば、いわゆる人畜共通伝染病のように、従来からその疾病について知られているものにおいても、利用する動物種やその調達先、利用法などの変化により、これまでとは違った形でその姿をあらわす場合がある。また、従来から知られていない全く新しい疾病も報告される状況にある。これらは、いわゆる新興・再興感染症と呼ばれ、それらの疾病の台頭は社会構造の変化などを含めて新たな疾病に対する調査研究や対策が求められている。

従来、獣医師は、家畜の診療を中心に、ヒトが動物に直接的に接し利用する場において、その専門知識を持って動物の疾病治療を中心に行ってきたが、今日では、単に動物と人が接する機会以外のより広範囲に獣医師の活躍の場が広がりつつある。例えば、公衆衛生分野は、食肉など食品衛生のほか人畜共通伝染病などの対策において、獣医師が活躍しまた今後活躍を期待される分野ではあるが、そこでは従来にも増した専門知識とより広範な実践的技術が求められている。

公衆衛生分野における獣医学への期待

1)感染症対策

人に対する感染症のなかには、狂犬病のように動物を主体とし人に対し重篤な影響を及ぼすものがある。これらの疾病については、従来から獣医師により動物に対する直接的な管理とともに、動物の登録や予防接種などについて法律の整備など公衆衛生上の対応が取られている。一方、近年、ラッサ熱やエボラ出血熱のようなウィルス性出血熱など新たなに人に対する感染症が報告されている。これらの70年代後半から報告されはじめた感染症は、新輿・再興感染症と呼ばれ、それらのなかには動物由来感染症も多い。我が国の感染症対策では、平成11年4月に「感染症の予防と感染症の患者のための医療に関する法律」(いわゆる感染症新法。対象となる疾病及び疾病の概要は図1のとおり)を施行し、感染症対策の一環とし� ��動物由来感染症対策を進めており、動物由来感染症対策の強化が強く求められている。

2)動物性食品を中心とした食品衛生対策

動物性食品を中心とした食品衛生対策では、従来から食肉や牛乳、またそれらを利用した製品の安全確保について獣医師が活躍していきた分野である。食中毒の発生状況(図2及び表1)では、今日でも従来と同様に、サルモネラや病原性大腸菌などの微生物により発生するものは報告されるものの多数を占め、また、その原因となっている食品は動物に由来するものであることが多い。これらの食中毒に対しては、従来からサルモネラなどの食中毒原因菌と主な原因食品を対象にと畜場における衛生対策や食品の製造基準等を施行し、食品衛生対策を進めている。

一方、従来からの食中毒に加え、近年、狂牛病やいわゆる耐性菌の出現など畜産形態の変化を背景とする問題が顕在化し始めている。これらの問題は、単に畜産形態が集約化されたことによることのみならず、動物性タンパクの再利用や動物用医薬品の利用などの新たな技術の応用にあたって出現したものである。

それらの対策にあたって、例えば、狂牛病に関しては、現代の科学でもその病因物質を特定するには至っていないものの、動物性タンパクの再利用の制限など畜産形態の変更により対策が講じられている。このほか食品衛生法分野では、我が国では魚など魚介額の消費が多いが、貝毒など有毒魚介類など水産食品衛生対策も重要になっている。また、有機農法等の新興により畜産廃棄物由来に由来する食品汚染も懸念されている。

3)実験動物利用への貢献

実験動物の利用は、化学物質に関する毒性評価、疾患モデルの開発など広範にわたり行われている。環境中に排出される汚染物質や工業分野において使用される化学物質による人への健康影響の評価においては、実験動物を利用した毒性評価は必須であり、また、最近ではいわゆる環境ホルモン様作用に関して知見が集まりつつある状況にあり、より微量で微少な影響に関する毒性評価試験の実施が求められている。このような状況は、実験動物の長期間にわたる健康菅理をはじめ、被験動物の観察や病理診断などが重要になっている。

また、近年の急速な高齢化社会の到来により、生活習慣病をはじめ種々の慢性疾患などについて予防をはじめ治療法の開発などが求められる状況にある。これらのことから、実験動物の活用については、今後機能に着目した評価などより広範な需要が見込まれているものと思われる。

4)基礎医学研究への貢献

人工授精などの繁殖工学では獣医学領域での応用が進んでいるが、これらの技術の人への応用など活用範囲が拡大している。また、バイオテクノロジーの応用により、生物由来の製剤や生物学的組織など動物の利用を伴う技術開発などが進んでいる。これらの技術の利用にあたっては、獣医学領域で蓄積される知見の利用が期待される。

5)その他

環境ホルモンなどの環境衛生対策、社会福祉分野での愛玩動物利用などの分野で活躍が期待されている。

獣医公衆衛生学教育への提言

以上、述べてきたような公衆衛生分野での獣医師の活躍に対する需要や期待に対応するにあたっては、大学における獣医師養成のための専門教育においてこれらの専門分野に関する教育の充実が期待されるところである。そのアプローチとして、いくつかの連携が考えられる。例えば、実社会での二一ズと現在の教育内容の比較するとか、海外での教育内容との比較、また、世代間や地域間での交流も教育内容について多く示唆を示してくれるものと期待される。

これら公衆衛生分野での多様な期待に対応するため、獣医系大学ではこれらの分野の基礎を網羅する教育が求められている。そのため、獣医学系大学間での協カのみならず、内外の獣医系以外の教育研究機閨、公衆衛生行政機関との連携や交流を促進することが必要であると考える。また、獣医師に対する卒後教育も重要であろう。

特に公衆衛生分野では、専門分野での追加的な教育が必要であることから、例えば、大学教育を終了した者や公衆衛生分野で実務を担当する者を対象に、公衆衛生学修士課程での教育訓練が必要である。公衆衛生学修士課程は、海外ではスクール・オブ・パブリックヘルスとして定着している教育課程であり、我が国でも国立公衆衛生院が対応している。しかしながら、獣医学系を中心とした公衆衛生分野での高等教育が必要である。